柊サナカさんの『あとはおいしいご飯があれば』を読みました。一三もの物語が収録されている、短編集になります。収録作品数のわりに本が薄いので、すぐに読み終えることができました。最近の私は、読書ができていない自覚があるけれど、エンジンもかからない状態だったので、一冊を読みきることができて、とても嬉しかったです。
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私が気に入ったのは、「二人の草と草」という作品です。ほかに、泣いてしまった作品もあったのですが、あえて、こちらの物語を紹介します。特に印象的なのはタイトルです。「草」が二つも入っているものって、珍しいのではないでしょうか。実は、タイトルは内容のままなのですが、読む前に意味がわかる人は少ないかもしれません。登場人物二人の、とてもいい関係を示しています。その関係が気になる人は、『あとはおいしいご飯があれば』を読んで、確認してみてください。
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この本には、それぞれの物語の最後に、物語に出てきた料理のレシピが載っています。その、どれもが、料理が下手な私でも、作ってみようかなと思えるようなものでした。シンプルだけれど、最強の料理、おにぎりのレシピもあります。今は、すっかり料理が苦手になってしまったけれど、幼いころ、子ども向けの料理本を眺めながら、簡単な料理に挑戦していたときのことを思い出しました。
そんなふうに、今まで生きてきた記憶のなかには、ごはんにまつわるものも、たくさん残っています。もちろん、いい記憶ばかりではありません。それでも、食べることには気持ちを上向かせる力があると、私は感じています。私が、落ち込んだときには甘いものを食べて気持ちをあげるように、登場人物たちが食べる、おいしいごはんにも、きっと同じようなパワーがあるのでしょう。