憧れるだけで終わらなかったのが、とてもよかった。

すずひらさんの『ひたすら会社で働く生き方から降りることにした 三度会社を辞めて、一度きりの人生を自分らしく生きる』を読みました。大好きな本に関わることのできる、書店員という仕事であっても、辞めたいなと感じてしまうことが、私には、ときどきあります。心が安定しているときには、この仕事が大好きだから、定年までしがみついていこう、と思っているくらいの職場なのに、どこかに今以上の環境があるのではないかと探してしまうのです。

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私は、『ひたすら会社で働く生き方から降りることにした 三度会社を辞めて、一度きりの人生を自分らしく生きる』を読んで、ほかに仕事を求めてしまうのは、ないものねだりなのかもしれない、と思うことができました。それだけ、今の、私の職場環境が恵まれているのでしょう。でも、その環境も、無条件で得たものではありません。転職を繰り返しながら、よりよい職場と出合うための努力をしたからです。この本を読んで、そのことを思い出しました。すずひらさんと私は、同じようなあがき方をしていたのです。

そう考えると、私も、まあ、ぎりぎりのところで踏みとどまっているような気がしますが、それでも、『ひたすら会社で働く生き方から降りることにした 三度会社を辞めて、一度きりの人生を自分らしく生きる』を読んで、私の場合は、個人で働くよりも、雇われていたほうがいいのだろうな、と冷静に判断することができました。目が覚めたわけです。いつもなら、すずひらさんのように個人で働いてみたい、そんな気持ちになりそうなのですが、そうはなりませんでした。

それは、おそらくですが、この本の内容が、読む人に誠実だったからなのではないかな、と感じています。格好つけがないような印象を受けました。あくまでも私の印象なので、本当のところはわかりませんが、そう感じさせられる内容でした。正直に書くと、赤裸々すぎて、すずひらさんの思考回路に苛々するようなこともありました。私が読書をしていて苛々するのは、とても珍しいことなのです。すずひらさんの姿に憧れるだけで終わらなかったのが、とてもよかった、と思っています。

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