納得できてしまうのが恐ろしかった。

朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』を読みました。厚い本なので、読んでも読んでも終わらなくて、途中、心が挫けそうでした。私は、ほんわか温かいストーリーが大好きなので、本屋大賞のノミネート作品でなければ、手に取っていなかったでしょう。貴重な読書経験をしました。

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『イン・ザ・メガチャーチ』を読んでいたら、あれ、これは覚えがあるぞ、というような場面がいくつも出てきました。その記憶が、ほかの小説などのフィクションではなく、現実に基づいたものだったのが驚きでした。

登場人物たちの現実とは重ならないような世界で生きている私でも、ああ、なんとなくわかるな、と納得できてしまうのが恐ろしかったです。私は、いたるところにあるだろう罠に引っかからずにいるのではなく、たまたま避けてきただけにすぎないのだろうな、と感じました。しかも、罠は罠のかたちをしていないのです。ときに、思いやりのようなかたちでも近づいてきます。

自分のことだけではなく、私が想う大切な人たちも守るために、この読書で得た経験は活かしていきたいです。実際に体験してからでは取り返しのつかないことでも、読書であれば疑似体験ができます。これも読書のいいところです。

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物語に触れるとき、私は、その世界を味わうことが多いのですが、『イン・ザ・メガチャーチ』はリアルすぎて、物語の世界よりも、現実の世界のほうが引っ張られてきてしまいました。物語を読んでいるはずなのに、とことん現実的で、物語の展開に怖くもなりましたが、これが、私が生きている現実なのだ、と肝に銘じておきます。

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