私の家族は、本に、あまり興味がありません。その家族から、2024年本屋大賞の大賞受賞作品を尋ねられたので、不思議に感じながらも、『成瀬は天下を取りにいく』というタイトルを挙げたら、すごい、とか、さすが、などと言われてしまいました。私がリビングにいないあいだに、テレビのクイズ番組で、そのタイトルが問題として出題されていたようなのです。
私自身は書店員をしているし、友人にも読書が好きな人が多いです。そんな世界で、『成瀬は天下を取りにいく』と答えられるのは、そんなに珍しいことでもないでしょう。でも、私は、家族からの、すごい、とか、さすが、などの言葉を否定しませんでした。本を読まない人からしたら、『成瀬は天下を取りにいく』というタイトルを答えられるのは、すごいことなんだ、ということが伝わってきたからです。
私は、ありがとうという気持ちで、素直に、家族からの言葉を受けとめました。本当に、ありがたいことです。自分のあたりまえを押しつけていたら、このことには気づけていなかったかもしれません。
そんなことくらいでと感じる人は、そのままでもいいのです。否定はしません。ただ、私は、家族の言葉のおかげで、ちょっとだけ自分に自信が持てたし、新しい視点を得られたので、そういうことに気づける自分でよかったと思っています。仕事で、もやもやしているときに、よく、こういうできごとが起こるので、これは、もう、書店員に全振りして仕事をしろというお告げなのかもしれません。